インフルエンザとは
インフルエンザはいわゆる「カゼ」とは区別される疾患です。カゼと異なる特徴は、のどの痛み・鼻水・くしゃみなどのいわゆる「カゼ症状」がないあるいは出始めの早期から39℃近い高熱が出現し、その後に続く症状が重いことがあげられます。ほかにも、感染後に気管支炎や肺炎を併発しやすいことも特徴といえるでしょう。また、人から人へうつりやすいことも大きな特徴で、これにより短期間に流行して社会的な問題になることもあるわけです。
インフルエンザワクチンによる予防接種は、必ずしも感染をシャットアウトしてくれる訳ではありません。しかし、上記のような重い症状を軽くしたり、感染の拡大を抑えてくれることが期待されます。
従来のインフルエンザの流行は、おおむね12月から2月頃までです。この時期に合わせて10月半ば頃からワクチンの接種を行うと良いでしょう。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome = SAS)
睡眠時無呼吸症候群とは
一言で簡単に説明すると、読んで字のごとく「寝ている間に呼吸が止まってしまう」病気です。数年前に山陽新幹線の居眠り事故の原因であったことが判明して話題になりました。この病気には2つの原因すなわち、
(1).いびきがひどくなりすぎて呼吸が止まってしまう「閉塞性」と、
(2).脳が呼吸をする命令をやめてしまう「中枢性」とがあります。
通常家族に指摘されて気づくのは(1)の閉塞性が原因のSASであり、頻度もこちらが圧倒的です。いびきは肺への空気の通り道である気道がふさがれてしまうために生じます。舌や扁桃腺による閉塞が主であり、ふさがれ方がひどくなると呼吸自体も止められてしまうわけです。
このような方は要注意
息が止まると言っても、そのまま永遠に止まってしまうことはありませんが、知らず知らずのうちに日常生活に支障をきたしたり、心臓や脳に悪影響を与えることが懸念されています。何となくおかしいかな、あやしいかな、と思ったら早めに睡眠時無呼吸の検査をして的確な治療を受けるようにしましょう。
特に、以下のような方は要注意です
身体的特徴 :太っている、アゴが短い、扁桃腺が大きい、いびきがうるさい
自覚症状 :起床時の頭痛、日中の傾眠、寝てはいけない場面での睡眠
一般的な受診から治療までの流れ
家族に「睡眠中に呼吸が止まっている」と言われて心配になって・・
→夜間の呼吸状況や酸素不足を検出する簡易検査を実施
(前日に当院で検査機械をお預けし、一晩検査した後に回収致します)
→検査結果(無呼吸低呼吸指数)に応じて治療
<治療>
(1).就寝中の体勢の変更:横向きで眠るだけでも気道の閉塞は大幅に解消します。
(2).マウスピース(スリープスプリント):これで下顎を前に出すようにするだけでも比較的改善します。
(3).CPAP(シーパップ):鼻マスクで気道に圧力を加え気道の閉塞を防ぎます。最も確実です。
当院では検査した上で必要があれば、(3)の治療を優先します。また、検査の結果が軽症であってCPAPの保険適応とならない場合には(2)のマウスピースによる治療をお勧めします。当院では、近隣の歯科医院と連携し、保険利用でのマウスピースの作成を依頼しております。
気管支喘息
子供の頃に、運動や風邪をきっかけとして呼吸が苦しくなったり、空咳が続いたりした経験のある方はいらっしゃるのではないでしょうか。子供の頃に小児科に通って、何かわからないけれどもモクモクと出てくる煙を吸入させられていた記憶がある方などは、それが小児喘息の治療だった可能性があります。大人になる前に、知らないうちに症状が出なくなってしまうことが多いのですが、学校に通っている間も、社会人になってからも、ずっと症状が出続けてしまうことや、一旦でなくなった症状が大人になって再び出現することもあります。もちろん、小児喘息の経験はないのに大人になって初めて症状が出ることも珍しくはありません。
この気管支喘息という病気は、肺に空気を送るための通り道である「気管支」が狭くなってしまう病気です。従って、気管支が狭くなると空気が肺に出入りする際の抵抗が大きくなり、「息がしにくい」感じや、「息が苦しい」感じを伴うようになり、具合が悪い時にはヒーヒ-、ヒューヒューという「喘鳴」が強くなります。ひどいときには酸素が十分取り込めなくなるようになり入院にいたるケースもあります。
気管支が狭くなる原因は、気管支の表面を皮膚のように覆う粘膜が炎症を起こしむくむことです。気管支の表面の炎症により粘膜が過敏になりますので、まずはじめの軽い症状として空咳がコンコンと出やすくなる事があります。それから、タンを吐き出しにくくなったりするのもはじめの頃に良く見られる症状です。炎症の起きる原因としては、アレルギー、風邪などでのウイルス/細菌による感染、あるいはストレスや運動など様々なものがあげられます。ですので、
(1)花粉の時期によく空咳が続く、ペットを飼い始めてから咳が出やすい
(2)風邪を引くといつも息が苦しくなり、ひどくなると息を吐く時にのどの奥で「ヒーヒー」「ヒューヒュー」音がする
(3)仕事が続くと明け方に咳が出続けて眠れなくなる
(4)運動をしていると周りの人に比べてやけに息苦しさが強かったり、運動後に空咳が続いたりする
などは私が良く耳にする訴えです。このような症状を感じた方はゼンソクかも知れません、一度呼吸器科医にご相談してみてください。聴診、呼吸機能検査、アレルギーの血液検査(IgE等)などにより診断が可能です。
またゼンソクの治療法は現在非常に進歩してきており、受診をして治療を受けて頂くことにより速やかに症状を軽減させることが可能です。具体的には、ステロイドという炎症を抑える薬を中心に、気管支を拡げる薬や、アレルギーを抑える薬を使用します。これらの薬の投与方法は、点滴・吸入・内服などを症状に応じて使い分けます。そして、その量も症状に応じて調節します。症状が安定していれば投薬量を減らしていくことも可能です。ゼンソクという病気は医者が診察した症状よりも自分で感じる病状の方が軽いものです。自分では良くなったと思っていても、聴診するとまだゼーゼーしているのです。症状を完全に落ち着かせるためには、しっかりとした量の治療薬を少なくとも数ヶ月単位で継続することが必要です。
そしてまた大事な点は、ゼンソクは高血圧やコレステロール異常などの病気と同様に「慢性疾患」と呼ばれる病気であるという点です。症状が出ている期間だけがゼンソクなのではなく、普段からゼンソクという「体質」なのであり、治療は継続することも大事で、少なくとも吸入ステロイドは中止すべきではないと考えられています。症状が出ていないと治療を受けるのは億劫になりますが、ゼンソクと診断されたら病気のことをよく知ってしっかり継続して治療を受けるようにしましょう。
また、タバコはゼンソクを悪化させる大きな原因の一つです。自分が止めるのはもちろん、周りの人のために止めてあげる優しさも大事です。